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「俺、海に行かないと。」
 
 先日、知人と交わしたなにげない会話。その日、私は仕事先の知人と昼食をとっていました。いつもは数人で昼食をとるのですが、その日はたまたま二人での食事となり、仕事のことや家族のことなど、冗談を言いながら話をしました。そのうちに話題は『週末の過ごしかた』に。

 「俺ね、海に行かないと。」彼がサーファーだということは、前から聞いていました。もうかなりいい大人ですが、一年中暇を見つけては、海に行っているそうです。「なんかさ、海に行ってないとだめだね。仕事もいやんなっちゃうし。やっぱり海とかさ、自然にふれないと気持ちがすさんじゃうよ。」会社の中で働いている彼しか知らなかった私は、急に目の前にいる彼が会社の知人というより、ひとりの人間としてくっきり見えてきたのでした。

  たしかに、人は本当の自然にふれたとき、なんだかほっと一息つくことができます。都会の人々のあいだでは、ヒーリングやリラクゼーションがはやり、いろいろなグッズが売れています。コンクリートに囲まれた環境で暮らしていれば、人間の本能としてそういったものを欲するからでしょう。木々に囲まれ、澄んだ空に守られ、豊かな海の音が聞こえてくるような環境の中で一生を過ごせれば、ヒーリングやリラクゼーションなんて必要ないのかもしれません。いいなぁ、憧れちゃいます。でも、もし自分がその環境で生まれ育ったら・・・きっと、それがどんなに大切なことなのか気づくことはできなかったでしょうし、その大切さを伝えようなんて考えもしなかったと思います。皮肉なことだけれど、人にとって何が必要で何が大切なものなのか、今こうして都会暮らしをしているからこそ気づけるのかもしれないな・・・彼と話をしてあらためて感じたのでした。
1999/02/03
 
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