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あんな人もこんな人も
 
 先日電車に乗っていたときのこと。私の前の席にひとりの男性が座っていました。年齢はおそらく50才半ばくらい。サラリーマン風の体格の立派な人です。満員電車ではありませんでしたが座席には空いているところがなく、吊革につかまって揺られている人もいました。

 その男性は、新聞を読んでいました。まるで自宅の座椅子にでも座ってくつろいでいるかのように。新聞を両手に持って大きく広げ、ガサガサいわせながらページをめくっています。両隣に座っている人は、とても窮屈そうにして、男性が新聞をめくるたびに顔をしかめていました。

 そう、彼はいわゆるマナーの悪い迷惑な人。とても不愉快なおじさんです。まったくいい年をして、なんておじさんだろう!直接何かされたわけでもない私も、なんだか腹が立ってきました。そんな彼の姿を見ていたら、このおじさんにも子どものころがあったんだろうなぁ、なんていう考えが浮かんできました。そして、おじさんが子どもだったころの姿を想像しました。それは目が透き通った元気そうな男の子です。私は思いました。いったいこの男の子が、どこでこんな人になっちゃったんだろう。周りの人に思いを寄り添わせる大切さを、ちゃんと教えてくれる大人がいなかったんだろうな。なんて気の毒な人。そう思ってもう一度彼をみると、男の子はおじさんに戻っていました。やっぱり迷惑な憎らしいおじさんです。だけど、彼も昔は透き通った目をした男の子だったんだと思ったら、あまり腹は立ちませんでした。

 どんな人も昔は目をきらきらさせた子どもだった。このおじさんも、お父さんもお母さんも、もちろん自分自身も。私の目は、あのころのようにまだきらきらしているのかな?そんな事を感じたのでした。
2000/10/27
 
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