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「おじゃましまーす。」
 
 気がつけばもう12月。あっ、たいへん!紅葉が終わっちゃう!ということで、ちょうど時間のあいた日曜日、紅葉を見に行こうと千葉の養老渓谷へ行きました。このあたりは日本で一番最後に紅葉前線が来るといわれているところらしく、12月の上旬だったらまだまだ見頃なんだそうです。

 しかし「養老渓谷へ行った」というのは実は正確ではありません。なぜなら、途中で道を間違ってしまい、目的地にはたどり着けなかったから。山へ向かってるはずが、いつの間にやら海に向かっていたのでした。もう少しで日が暮れてくるし、途中でけっこう山のきれいな彩りを見ることができたし、予定を変更して海側のどこか楽しそうなところ行こう!ということになりました。「さて、どこか楽しそうなところねぇ...」と考えていると、数年前に行った勝浦海中公園という場所を思い出しました。

 あのとき、その名前だけにひかれてとってもわくわくした“海中公園”。どんなところかというと、海にたてられた展望塔から海中を覗くというもの。岸から数十メートルの橋がつくられていて、歩いてその展望塔まで渡ります。塔に辿り着いたらその塔の中心にあるらせん階段を降りていきます。階段の途中の柱に“ここから海中”という文字が書いてあって「おお、ここから海の中なんだぁ。」なんて思いながらさらに降りていくと、けっして広いとはいえないスペースに到着。降りてきたらせん階段を中心にぐるりと一周するようになっています。壁にはいくつもの小さな窓が高い位置と低い位置に等間隔に配置されていて、そこから海の中を覗くというわけです。以前来たときは時間帯が半端だったためか、これといって珍しい魚を見ることもできなくて「なーんだぁ...」と思った記憶があったので、展望塔に着いた私はまったく期待せずに階段を降りていったのでした。ところが今回は、お馴染みのアジやかわいらしいハコフグをはじめ、熱帯魚のような美しい色の小さな魚たち、1.5メートルくらいのトチザメやけっこう大きなウツボなど「おおー!」というような魚たちを見ることができたのでした。私たちは海に陽が沈む少し前まで「わー、ここにツノダシがぁ!」とか「あの砂地に見えるのはヒラメじゃないの!」なんて興奮しながら海を覗いていました。一通り騒ぎ終わって、もうそろそろ帰ろうということになり降りてきた階段をのぼって塔の外に出ました。私は海の上の橋を歩きながら思いました。「なんか、健全な感じ。」

 私は“向こうの都合でやってくる魚たち”を見て、彼らと同じ土俵に立っている感じがしたのです。「住む環境はちがうけど、同じ星の住人だね。」と。この感覚は“人の都合でそこにいる魚たち”を見る水族館では、きっと感じることが難しいのではないかと思います。
 帰り際、私は海に向かって思いました。「今日はちょっと海におじゃまさせてもらいました。ありがとう!」
2001/12/12
 
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